“しぶちん”とは大阪弁でケチン坊のことだが、ケチが陰にこもらない開放的な言い方である。
最近、オーディオ・ブックを車の運転中に聞くのが楽しみの一つ。
祖父が山崎豊子が好きでよく読んでいたので、関心がいった。
主人公は、ものすごくケチでお金を貯めることが楽しみであり、生きがいな人。
人生のすべての根底には「お金を貯めること」がある。
お金を貯めるために、使い走りの中で利益が出るしくみを考えてみたり、休日を買い取ってもらいお金でもらったり、奥さんとの結婚式を質素にしたり、様々な節約っぷりを発揮する。
そこまで極めると関心するが、本人は良いけど、周りの人がかわいそう。
特に奥さんに同情してしまった。ぼくも同じことをしていないか気になった。
人間は、一つのことに観点が固定しまうと、そのことしか見えなくなってしまう。この本で言えば「お金を貯めること」。
そのことを作者の山崎さんは伝えたかったのではないか。
ぼくは、なんで山崎さんはこの本を書いたのか気になりました。
それには、この本が書かれた時代背景が関わっていると思い調べたところ、この本が出版されたのが、1965年4月。
東京オリンピックの翌年で、いざなぎ景気がはじまった年。
いざなぎ景気(いざなぎけいき)とは、1965年(昭和40年)11月から1970年(昭和45年)7月までの57か月間続いた高度経済成長時代の好景気の通称。(ウィキペディアより)
これから好景気になる、お金だけに囚われず、いろいろな観点でものごとを見て、感じてほしいというメッセージを残したかったのかと思いました。
一見、ものすごくケチな人の一生の小説だけど、あとでじわじわ考えさせることがたくさん浮かぶ作品です。